【本の要約】「人を動かす」デール・カーネギー

この記事のポイント

  • 人を動かす鍵は「自己有用感」にあり、人はみな「自分が有用である」と感じたいと強く願っている
  • 批判や非難は相手の自己有用感を傷つけるため、いかなる状況でも避けるべき
  • 議論に勝とうとするよりも、相手の自己有用感を高める方が人間関係構築において効果的
  • 相手の自己有用感を高める具体的方法は、①心から評価し称賛する、②相手が欲しいものを示す、③良い聞き手になる
  • 世界的大富豪のカーネギーも実践していた「他者称賛」の習慣が、ビジネスでも私生活でも成功への近道になる

「なぜあの人は周りから信頼され、思い通りに人を動かせるのだろう?」

「どうすれば職場や家庭で良好な人間関係を築けるのだろう?」

あなたもこんな疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。人間関係の悩みは、時代を問わず多くの人が抱える永遠のテーマです。

本記事では、1936年に出版され、今なお世界中で1500万部以上の売上を誇る名著『人を動かす』(デール・カーネギー著)のエッセンスをお届けします。この本が85年以上も読み継がれている理由、そして人間関係を劇的に改善する秘訣をわかりやすく解説します。

原題は「How to Win Friends and Influence People」です。直訳すると「友達を獲得する方法と人々に影響を与える方法」となります。

分かりやすく言語化

結論から言語化

人を動かす秘訣は批判を避け、相手の自己有用感を高めることにあります。

人は誰でも「自分が有用である」と感じたい欲求を強く持っており、この欲求が満たされると相手に好意を持ち、言うことを聞く傾向があるからです。

鉄鋼王カーネギーに年俸100万ドルで雇われたシュワブ氏は、「人から最大の力を引き出す方法は感謝と激励だ」と述べ、粗探しよりも褒めることに積極的だったことで大きな成功を収めました。

批判や非難は避け、代わりに心からの称賛、相手の欲しいものへの注目、そして良い聞き手になることで、人は自然とあなたに協力したくなり、人間関係が劇的に改善します。

明日から1週間、「批判ゼロ・称賛3回・聴く比率80%」を実践してみて、人間関係がどう変化するか観察してみませんか?

背景から言語化

人間関係の悩みは誰もが抱える永遠のテーマであり、職場や家庭で「なぜうまく人を動かせないのか」と悩む人は多いですが、多くの場合、無意識の批判や自己中心的なコミュニケーションが原因となっています。

批判や非難は相手の自己有用感(自分が役に立っていると感じる感覚)を傷つけるため、たとえ100%正しくても、相手は防衛的になり、逆効果になってしまうのです。

批判や議論を完全に避け、代わりに①心からの称賛、②相手の欲しいものに注目する、③良い聞き手になる、という3つの方法で相手の自己有用感を高めましょう。

こうした行動の変化により、相手はあなたに好意を持ち、自然とあなたの言うことを聞くようになり、職場でも家庭でも人間関係が劇的に改善し、ストレスが減少し、人生の満足度が向上します。

人を動かす鍵は「自己有用感」にある

『人を動かす』には39の原則が紹介されていますが、すべての根底にある考え方をたどると、一つの鍵にたどり着きます。それが**「自己有用感」**です。

自己有用感とは、自分が有用であると感じることです。誇りや自尊心、プライドといった言葉がイメージとして近いでしょう。

人間の8つの欲求

人間が主に欲するものには8つあると言われています:

  1. 健康
  2. 食事
  3. 睡眠
  4. お金
  5. 来世の幸せ
  6. 性的満足
  7. 子供の幸せ
  8. 自己有用感

食事や睡眠、お金といった基本的欲求と同様に、人は「自分が有用である」と感じたいという欲求を強く持っています。感謝されたい、褒められたいという気持ちは誰もが持っているものです。

しかし、食べたり寝たりお金をもらったりすることは日常的に行われていても、感謝されたり褒められたりすることは比較的少ないものです。むしろ、叱られたりダメ出しされて自信をなくすことの方が多いかもしれません。

『人を動かす』で紹介されている原則は、この「自己有用感」を鍵としています。相手の自己有用感を高めることで、良好な人間関係を構築し、相手を動かすことができるのです。

批判や非難をしない:自己有用感を傷つけない方法

人を動かすための第一のポイントは、批判や非難をしないことです。

批判は自己有用感を奪う行為

お腹が空いている人の目の前から食事を取り上げたら、その人は機嫌を損ねるでしょう。同様に、自己有用感が足りていない人からそれを取り上げたら、その人は気分が落ち込んでしまいます。

批判や非難は、相手の自己有用感を減らす行為なのです。相手の自己有用感を減らさないためには、批判や非難をしないことが重要です。

人は自分の非を認めない:凶悪犯のエピソード

「自分が正しくて相手が間違っているときなら非難してもいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、いついかなるときも批判や非難は避けるべきだと本書は強調しています。

その例として、1931年のニューヨークで活動した「二丁拳銃のクロウリー」という殺人者のエピソードが紹介されています。クロウリーは警官から免許証の提示を求められただけで発砲し、倒れた警官からさらに銃を奪って弾丸を打ち込むような凶悪犯でした。

しかし、本人は「本当の俺は誰も傷つけたりしないし、優しい心を持っている」と語り、死刑を目前にしても「これは自分を守った結果だ」と反省の言葉を口にしませんでした。

同様に、悪名高いギャング、アル・カポネも「みんなのために尽くしてきたのに侮辱され指名手配された」と述べ、自分を「慈善事業家」だと考えていました。

このように、明らかに悪いことをした人でさえ、自分が悪いとは思わないのです。著者は「100人中99人は、どれほど自分が間違っていてもなかなか自分の非を認めない」と述べています。

議論に勝つことは不可能

批判や非難をしない理由の一つとして、「議論に勝つことは不可能」という点も挙げられています。著者はディベート(討論)を教える仕事もしていましたが、その経験から「議論において最善の成果を得る方法はただ一つ、議論を避けることだ」と結論づけています。

議論において相手の論点を攻撃して打ち負かしたとしても、相手の本心を変えることはできません。アメリカ建国の父、ベンジャミン・フランクリンも「議論したり反論したりして勝利を得ても、相手の好意を得ることは決してなく、空虚な勝利となるだろう」と言っています。

あなたは理屈で勝ち自分がいい気分になることを望みますか?それとも相手から好意を得ることや相手を動かすことを望みますか?人を動かすためには、議論は避けましょう。

相手がしてほしいことをする:自己有用感を高める方法

批判や非難を避けるだけでなく、積極的に相手の自己有用感を高めることも重要です。本書から3つの方法をピックアップして紹介します。

1. 心から評価し、惜しみなく称賛する

鉄鋼王と呼ばれたアンドリュー・カーネギー(約30兆円の資産を築いた大実業家)は、チャールズ・シュワブという人物を年俸100万ドルで雇っていました。

シュワブ氏がそれほど高い報酬に値した理由は、「人を扱う能力」に優れていたからです。シュワブ氏はこう語っています:

「私は人の熱意を呼び起こすことができる。人から最大の力を引き出す方法は感謝と激励だ。上司からの批判ほど人の熱意を潰すものはない。私は誰も批判しない。人には働く意欲を与えるのが正しいだから私は褒めることには積極的だが、粗探しには消極的だ。気に入ったことは心から評価し、惜しみなく称賛する」

カーネギー自身も人を称賛することを大切にしていました。彼は自分のお墓に「おのれより賢い者を集めし者ここに眠る」という文章を残しています。30兆円の資産を築いて「自分はすごい」と言いたくなりそうなものですが、カーネギーは自分ではなく他者を称賛したのです。

2. 相手の欲しいものについて話し、手に入れる方法を教える

著者によれば、他人に影響を与える方法はただ一つ、「相手が欲しいものについて話し、それを手に入れる方法を教えること」だといいます。

カーネギー氏の義理の妹には大学生の息子が2人いましたが、彼らは母親からの手紙に返事を書きませんでした。そこでカーネギー氏は一つの賭けを提案し、自分が手紙を送れば返事が来るだろうと言いました。

彼は普通の文面に「追伸:それぞれに5ドルずつ同封した」と書き添えました。実際にはお金を同封していませんでしたが、2人から手紙の返事が届きました。

これは「相手が欲しいもの(お金)について示し、それを手に入れる方法(返事を書くこと)に気づかせた」という原則を満たしています。人は自分が欲しいものが手に入ると思うとき、動くのです。

3. 良い聞き手になる

「話し上手な人」として尊敬されるのはどんな人でしょうか?それは実は「良い聞き手になれる人」です。なぜなら、話し上手は会話によって相手のことを良い気分にする人だからです。

人はどんな会話をすると良い気分になるでしょうか?それは自分のことを話している時です。自分のことを話させてくれる人が「話し上手」なのです。

しかし、多くの人は:

  • 人の話を長く聞かない
  • ひたすら自分について語る
  • 相手が話しているとき、自分の考えが思いついたら途中で遮る

こういう行動をとる人は避けられ、軽蔑されます。

良い人間関係を築きたい人は:

  • 相手の話を長く聞く
  • 自分の話は積極的にはしない
  • 話したいことを思いついても、相手の話は邪魔をしない

会話をするときは相手の話に関心を持ち、質問をしましょう。相手自身のことや相手が達成したいことについて話してもらいましょう。そうすれば相手は自己有用感が高まり、良い気分になります。するとあなたは「話し上手」だと評価され、良い人間関係を築けるのです。

まとめ:人を動かす3つの原則

『人を動かす』のエッセンスをまとめると、以下の3つの原則に集約されます:

  1. 人を動かす鍵は「自己有用感」
    • 自己有用感は、褒められたり感謝されたりすることで得られる
    • 普段なかなか満たされづらい欲求なので、人は強くこれを欲する
  2. 批判や非難をしない
    • 人は非難されても自分の非をなかなか認めない
    • 議論に勝つことは不可能である
  3. 相手がしてほしいことをする
    • 心から評価し、惜しみなく称賛する
    • 相手の欲しいものについて話し、手に入れる方法を教える
    • 良い聞き手になる

これらの原則を実践することで、あなたの人間関係は劇的に改善し、人を思い通りに動かせるようになるでしょう。

本記事著者のあとがき

この記事を書きながら、私は自分の日常的な行動を振り返っていました。つい先日も、家族との何気ない会話の中で「いや、それは違うよ」と批判的な言葉を口にしていたことを思い出しました。

カーネギーの言う通り、批判は相手の自己有用感を傷つけ、関係性を悪化させるだけだったのかもしれません。また、「良い聞き手になる」という部分も心に響きました。私は自分の話に夢中になって、相手の話を途中で遮ってしまうことがよくあります。

特に印象に残ったのは、世界的大富豪のカーネギーが「おのれより賢い者を集めし者ここに眠る」という言葉を墓碑に残したエピソードです。成功者は自分の功績を誇るのではなく、他者を称賛する謙虚さを持っているのだと気づかされました。

明日から、次の3つのことを実践してみようと思います:

  1. 批判や非難を完全に控える(たとえ相手が明らかに間違っていても)
  2. 心から相手を称賛する瞬間を1日に最低3回作る
  3. 会話では80%聴き、20%話すという比率を意識する

皆さんも、ぜひ今日から「批判ゼロ、称賛満載」の1日を過ごしてみてください。わずか1週間でも続ければ、周囲の反応の変化に驚くことでしょう。そして、本記事で紹介した内容はあくまで『人を動かす』のエッセンスの一部です。さらに深く学びたい方は、ぜひ原著を手に取ってみてください。

人間関係の改善は、自分自身の小さな変化から始まります。今日からその第一歩を踏み出してみませんか?